今日聴いたもの

向う岸から / 羽丘じん
ビクターSFレーベルの75年盤。ちょっと井上陽水を思わせる妖艶なハイトーンボイスが特徴的で、ヴォードビル・ピアノポップ的な"朝にめざめよう"やクラヴィネット・ファンクの"分別ざかり"あたりはホントに「断絶」や「氷の世界」に収録されていてもおかしくないようなシニカルなイイ曲。上昇気流系ディスコ・ニューミュージックな"ひとり者"も79年の「スニーカーダンサー」とかあの辺の雰囲気が。これらの曲や、凝った展開を見せる1曲目のビートリッシュパワーポップ"なつかしい君"などで見られる、ちょっとモダンな洋楽指向と、やたらと情緒的なマイナー歌謡フォーク路線とのギャップが大きくて戸惑うんだけど、その二つの指向のバランスが絶妙なロシア民謡調の歌謡ロック"愛はヴィオロン"はアルバム中でも印象的な存在。
鏡の中の肖像 / サウンド・スペース
こちらもビクターSFレーベルの75年盤。裏ジャケにはいかにも男性フォークデュオという佇まいの二人組。しかし作詞寺山修司/作編曲佐藤充彦という布陣でただのフォーク歌謡作品になるはずもなく、日本情緒と洗練されたクロスオーヴァー指向が融合したプログレシッヴなフォーキーMOR〜シティポップという感じで、"ファージョンの童話から"をはじめ、メリハリの効いた構成が素晴らしい"みだれ髪"、ソフィスティケトされたフォーキー喫茶ロック"コーヒー・アローン"など、耳ざわりの良さとは裏腹にかなり凝った楽曲ばかり。佐藤允彦以外の作曲家の曲が並ぶ終盤はやや失速するものの、シングル曲やコンピ収録曲だけがイイ曲というようなアルバムではなくて、むしろそういう曲もそれほど目立たないくらいの名曲揃いな傑作。