今日聴いたもの

東風 / 高石ともや
72年。「宇野誠一郎 作品集」に収録されてた洒脱なハワイアン・ジャズ歌謡"梨の実をかじる歌"が大好きで、これは前から聞いてみたかったアルバム。コトバとメロディー、リズムのバランスにさりげなく工夫が凝らされた、ウィットの利いた現代歌曲集という感じで、これだけまとめて聞いたのは初めてだけど、高石ともやの抑制の効いたリラクシンなヴォーカルもかなり魅力的。ラテンなソフトロック・サウンドにフォーキーなトーキング・スタイルのヴォーカルが乗る"きちんと物を考えよう"、デュオ・スタイルのヴォーカルがイイ感じの軽妙なアコースティック・スウィング"重い荷物と軽い荷物"、執拗なインタビュアーを諷刺した曲かと思わせて実はラブソングと明かされるオチが最高なオーケストラル・ポップ"調査なくして発言権はなし"など、全体に高度成長期日本のムードが横溢した、何というか和田誠柳原良平のイラストのイメージ。ディスクユニオンのMR5000番台再発シリーズ。
歌えなくなる前に / クニ河内
72年。GS時代同様、ニューロックをやっても洗練されてて、かつ野心的な独自の世界を展開。1曲目、半音下降のクリシェがお洒落な変拍子オルガン・ロック"歌えなくなる前に"からいきなりカッコイイ。教会音楽風のパイプオルガン・インストやピアノコンチェルト、ノスタルジックなピアノSSW風に叙情派フォークまで、バラエティに富んだ楽曲が並んだ1枚だけど、めちゃくちゃ垢抜けてるヒップなジャズ・グルーヴ・ロックの"人ごみの中で"に"雨降り大将"、ドラマティックに展開するオーケストラル・ポップ"風よご苦労さん"、シニカルな歌詞も面白い変拍子ファンキー・ロック"おお!お兄さん、ねえ!娘さん"など、岡沢章の太いベースがしなやかにうねるグルーヴィー・チューンがとにかく最高。ラストの、タイトルどおり夢幻的な雰囲気のダウナー・ロック"不思議な夢の物語"も妙に余韻が後を引く曲。