今日聴いたもの

ヘレン・メリル・シングス・ビートルズ / ヘレン・メリル
70年。日本制作盤。ビートルズをポピュラー風に料理したMOR寄りのジャズヴォーカル・アルバム、というジャケットのイメージに反して、佐藤允彦の才気あふれる野心的アレンジが炸裂する、ヒップでニューロックな1枚。1曲目の"Let It Be"こそ比較的原曲のイメージどおりのカヴァーだけど、すぐに様相が一変して、GSテイストのブルージージャズロックにフリーキーなピアノが絡む"Lady Madonna"、サイケデリック・サリーしてる疾走モッド・ジャズ"The Word"、ミステリアスなバラードがフリーキーなサイケ・ジャズ・ロック化する"Norwegian Wood"と、次から次にインパクトの強い曲が数珠繋ぎに。そして極めつけはメロウなヴォーカルと高速リズムアレンジの対比がほとんど人力ドラムンベースと言う感じの"Here There Aad Everywhere"と"Golden Slumbers"の2曲。たった45秒で終わるラストの"I Want You"もカッコイイ。バックは佐藤允彦、荒川康男、猪俣猛。
スポージン / ヘレン・メリル・ウィズ・ゲイリー・ピーコック・トリオ
71年のこれも日本制作盤。佐藤允彦(p, elp) ゲイリー・ピーコック(b) 日野元彦(ds)。リリカルさと不穏さが入り混じったピアノ・トリオ演奏をバックに、ひたすらスモーキーなウィスパリング・ヴォイスを聞かせるアブストラクト・ジャズ・ヴォーカル盤。アグレッシヴなフリー演奏とけだるいくスローなヴォーカルとの対比が強烈な"My Man"やグルーヴィーでクールな疾走チューン"Angel Eyes"といったキャッチーな曲にまずはグッとくるんだけど、しだいに"The Thrill Is Gone"や"If You Could See Me Now"、"In A Sentimental Mood 〜 Once Upon A Summertime"など、白昼夢的なスロー曲にじわじわハマってくる感じ。唯一エレピ使用の彼岸メロウなMORジャズ"Until It's Time For You To Go"は90年代のアブストラクト・ブレイクビーツに通じる感覚。