今日聴いたもの

悲しみ上手 / 夏木マリ
77年のオリジナル・アルバム。やさぐれ系ニューミュージック歌謡のタイトル曲はさておき、洒落たメロディーとコーラスワークにグッとくる穂口雄右作品"ステーション・ビル"、独特の跳ねるリズムにこれまた凝ったコーラス・アレンジがイイ感じの村井邦彦作品"夏の夜明けは悲しいの"といったオリエンタル・ディスコ路線、カヒミばりのウィスパー・ヴォイスも披露する萩田光雄作のマイナー・ヨーロピアン歌謡"裏切り"と、この時期のシングル曲はなかなかレベルが高い。アルバム・オリジナル曲もイイ曲が揃ってて、中でもちょっと平山三紀っぽいあばずれ歌謡で、強引なツギハギ構成が嬉しい"踊り子"とか最高。
寺山修司 イソップ物語 / 田中星児
73年。寺山修司によるイソップ童話をモチーフにした寓意的な歌詞に、J.A.シーザーをはじめ、深町純、パンタといった錚々たるメンツが曲をつけて、それを田中星児が健やかに歌うという不思議なアルバム。ほのぼのとした空気とアングラ・ムードが同居した独特のミスマッチ感が微妙に居心地悪いんだけど、"とべなかったカメ"や"大きな豚と小さな豚"といったハッとするような美メロ・ソフロ歌謡があったり、ダウナーなアシッド・フォーク"月夜のイタチ"とか、チェンバーな小唄からアヴァンな音頭に展開する摩訶不思議な"川に溺れた子ヒツジ"など、インパクトの強いプログレシッヴ曲もあり、かなり充実したアルバムなのは確か。