今日聴いたもの

Out / 小谷美紗子
今回も3ピースのピアノ・トリオ編成の新作。相変わらずグイグイ迫ってくるアンサンブルがカッコイイけど、今回はなんだか、ちょっとプログレっぽい印象。1曲目の疾走ピアノ・ロック"消えろ"からいきなり変拍子っぽいし、"Mad"の先の読めない凝った曲展開や、"fangs"の初期ルネッサンスを少し思い出すドラマティックな雰囲気とか。それにしても、"消えろ"の英語詞がサビでいきなり日本語になる瞬間がすごく斬新な感じ。しかもああいう内容だし。あと、ヒリヒリする焦燥感が心地イイ先行シングル"You"やSSWテイストの"笑う明かり"とか、サビで切ないメロディーが炸裂する黄金パターンの曲はホント泣ける。
Chico Buarque de Hollanda,No.4 / Chico Buarque
70年。ふんだんにホーンやストリングスを導入した、映画音楽やイージーリスニングっぽい流麗サウンド。ひたすら耳ざわりの良いボサ/ジャズ・サンバが並ぶ中、フラメンコっぽいギターをフィーチャーしたアシッド・ファンキー・ロック"まじめな話だよ"、サイケなイントロから官能的で哀愁に満ちたフォーキー・グルーヴに突入する"方位盤"、ムード歌謡コーラスっぽく始まり、ドラマティックなピアノ・バラードにメロウなボサと次々に曲調を変えて最後は元に戻る"陰謀者のテーマ"といった、アクセント的に置かれた不思議な楽曲群にやはりハッとさせられるけど、とはいえ、昭和40年代テイストの切ないホーン入りのお洒落サンバ"あの子は変わってしまった"にはキュンとくるし、哀愁トランペット入りの爪弾きボサ"サンバと愛"などの切ない系サウダージ路線もかなりイイ。
Construcao / Chico Buarque
71年。サスペンス・ムード満点のアブストラクトな呪術ロック"デウス・リ・パーギ"で幕を開けるこちらは、前作で見え隠れしていたサイケでエクスペリメンタルな感覚がより拡大してる様子。続く"コチヂアーノ"も一見軽快なサンバのようで、どうにも不穏な雰囲気だし、タイトル曲の"コンストゥルサォン"なんかは、クールなボサかと思わせて、唐突にスパイ映画のサントラのようなホーンが登場、徐々に緊迫感が増して、気がついたらミュージカルのクライマックス・シーンのようなハイな状態になっているという、かなりの怪作。一方でピースフルなソフト・ボサ"楽団"や、ファンキーなサンバ・ロック"オルリーのサンバ"みたいな普通にイイ曲も収録されてて、そのバランス感が素敵かも。